フタホシコオロギの茶と黒について
当方がコオロギの養殖を始める以前より、ペットショップに流通しているコオロギは茶色のフタホシコオロギしか在りませんでした。
生産当初(1994)は当養殖場も茶色のフタホシコオロギを生産しており、コオロギの色などには全く気にも止めておりませんでした。アロワナブームの為にコオロギ不足の時期でもあり、とにかく大量供給することが先決だったのですが、そのころはいろいろな意味において当養殖場の技術が未熟だったため、お客様の所(販売店様)に届いた時点で1〜2割はすでに落ちている事も多々有り、当然そのコオロギを買われて行くお客様の所でもポロポロと落ちていくという状態です。結果的に販売店様の信用を落してしまうという事にもなり大変御迷惑をお掛けしておりましたので、とにかく丈夫なコオロギを量産するという事が大命題でした。素人ながらいろいろと実験めいた事もしましたし、実際にコオロギを梱包して養殖場と自宅の間を宅急便で何回も往復させたりもしました。
試行錯誤から、ある事に気付き生産半年目以降からは、かなり丈夫なコオロギを出荷する事が出来るようになり、前述の様なクレームもほぼ無くなり品質自体にはある程度満足できる様になったのですが、見た目はまだどこでもよく見掛けられる茶色のフタホシコオロギです。
そこで(当時まだコオロギの養殖場も数えるほどしかなく、またそれぞれが独自の方法で生産していたのにもかかわらずどこも同じ様な茶色のコオロギでしたので)、外見からもその品質をアピールしたいと、どうにかして他の養殖場のコオロギと差別化を図りたいと思うようになりました。
私は養殖場を始める以前より爬虫類の飼育を趣味としており少量のコオロギを殖やしておりましたので、このころよりフタホシコオロギは茶色にまじって時々モノトーンの"Anerythristic"的な黒っぽい個体が出現する事を知っていましたし、ライフサイクルも短いことからどうにか短期間で固定できうる予感もありました。
まっ黒いフタホシコオロギを当養殖場の看板にしようと思いたったこの頃は、まだ何処の養殖場も黒いフタホシコオロギを生産していなかったので、さっそくいろいろと試した結果、翌年(1995)には当養殖場から出荷するほぼ全てのフタホシコオロギを真っ黒のフタホシコオロギにすることが出来る様になりました。
この真っ黒いコオロギは販売店様からも好評を頂き、黒いフタホシコオロギは丈夫な良いコオロギとしてイメージが出来、そのうちに(ここ1〜2年で)※クロコオロギと呼ばれるようになりましたが、このことで以前からの養殖された茶色いフタホシコオロギを茶コオロギまたは茶バネと呼ぶ(呼ばれる)ようになり現在では別種の様に扱う業者さんもあります。
今では当養殖場のコオロギを種親として間接的に入手されている業者の方(他の養殖場)もかなりいる様なので、全然差別化になっていないのが現状ですが。

当養殖場はお客様に御迷惑をお掛けしない為により丈夫な高品質のフタホシコオロギを生産するノウハウを確立し、その上で差別化の為に黒いコオロギを生産したのであって、仮に出荷するコオロギに若干茶色いコオロギが混じっていたとしても品質には何ら変わりはありません。
高品質のコオロギを生産するには他の畜産、農産物と同様に、とにかく手間を惜しまないことに尽きます。手間を掛けただけ良いものが出来ます。当然生産コストもそれなりに上がります。それゆえ他の養殖場のコオロギより若干ですが一見、高目の価格設定になっているかもしれませんが御理解下さい。(一見という表現をしたのはg単価で計算をして頂ければ御理解頂けるはずです)少なくともコオロギ専用の配合飼料だけでも他の家畜用飼料を流用した時と比べ倍近いコストが掛ります。単に黒いコオロギだからという訳ではありませんし実際、現在ではフタホシコオロギを黒くする事には手間もコストもかかっておりません。

栄養価と安全性

当養殖場のコオロギはそれらが十分な栄養素を摂取出来る完全代用食の専用飼料で飼育されていますが、フタホシコオロギ自体の栄養価については正直な所あるとも無いとも言えません。コオロギを摂取する動物、例えば爬虫両棲類とアロワナなどの魚類または鳥類などそれぞれ生きていく上で必要とする栄養素(バランス)に違いがあるはずですし、また必要とする栄養素も完全には分かっていない(と思う)と言う理由からです。
感覚的なことですが、冷凍コオロギよりも生きているコオロギ、更にはより活のいいコオロギのほうがそれを捕食する動物にとって良い様な気がします。
また当養殖場のコオロギは配合飼料と水(水道水ではなく汲み上げの飲料可能な地下水です。水質検査では硬水とまではいきませんがカルシウム分の多い上質の水です)のみで育ったコオロギで、飼料メーカーも防腐剤、着色剤、ホルモン剤、抗生物質その他の薬品等を一切使用していないと言うことなので安全性についても安心して頂いてよいと思っています。

因に海外のGrubco Incという餌用昆虫を販売しているサイトがあり、そこにコオロギ、ミルワーム、スーパーワームなどの冷凍サンプルの分析例がUPされています。コオロギのサンプルは多分"Acheta domestica"と思われますがフタフシコオロギも似た様なものだと思います(根拠はありません)


現在、餌用として流通している主なコオロギ

・クロコオロギ (Gryllus bimaculatus) フタホシコオロギの見た目が黒の物
・茶コオロギ or 茶羽 (Gryllus bimaculatus) フタホシコオロギの見た目が茶色の物
・ヨーロッパイエコオロギ or イエコオロギ (Acheta domestica) フタホシコオロギとは別種、見た目は茶色

※野外(自然条件下)で観られるフタホシコオロギは真っ黒なので以前よりクロコオロギともいわれていた。